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『さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜』感想、考察

5155字

 

紹介

基本情報

さよならを教えては2001年にcraftworkから発売された商業エロゲである。2016年にDLsiteにてDL版が発売された。以前は入手困難だったようだが、DL版が発売されてから廉価で手に入れられるようになった。

公式ジャンルはファナティックアドベンチャーノベル。

DL版では細かい変更点がある。また、作者のツイッターによると、一枚のCGが削除されたようだが、確認したところ、そのCGはちゃんと収録されていました。どういうことだろうか。後からまた追加されたのか。

また、本作の設定資料集&原画集もDLsiteにて販売されている。

 

購入時期や事前情報

2020年4月に購入した。本作は界隈での知名度がとても高い。ブログのみならず、動画サイトにも本作を扱う動画が複数あり、100万再生を超えるものもある。一方では三大電波ゲーの一つとして数えられ、もう一方では界隈屈指の高額な中古価格がついてることで有名だ。しかし、私としては、以前ネットで見た発売前後のcraftworkと長岡建蔵の境遇とその歴史も本作の格別な不気味さを際立たせている。呪われた作品にはそれなりのバックグラウンドがあると信じられているように。

また、本作は一般的にさよ教と約されるが、私はこれを「さよきょう」と呼んでいる。しかしネットなどでみると「さよおし」と呼ぶ人も複数いた。どっちだろうか。

 

おすすめポイント

本作は電波ゲと鬱ゲを代表する作品で、その怪奇さでプレイヤーに陰鬱さを与えるのはもちろんのこと、グラフィック、音楽、演出、テキストなどの全体的なクオリティも高い。

 

リンク

DLsiteDL版


公式紹介

さよなら…。今、全ての人に贈る最期の言葉。

間を見失い、すべてに逡巡し、自分の事さえも分からない男は、悪夢と白昼夢に悩まされながら、
教育実習生としての責務を全うしつつ、迷い子のように橙色の放課後を彷徨い続ける。

校内で出会う少女たちにやすらぎを求め、同僚の女性たちの顔色を伺う毎日。
彼と彼以外の間にあるのは深く暗い奈落だけだった。

彼はそこに転がり落ちるしかないのかも知れない。
そう、昼の次にやって来るのが夜でしかないように、人間が不眠不休で起き続けられないように、
人が空を飛べないように、1+1が2であるように、少女が女へと成長するように、
……至極当たり前のように。
正気と狂気の狭間を超えた時、あなたが目撃する結末とは……!?

 

感想

ストーリー

本作は三大電波ゲーの一つに数えられている上、とても話題になりやすい内容なので、プレイしていなくても調べれば情報がたくさん出てくる。デモで「〇〇な方はプレイしないでください」とあったり、ネットで本作の狂気がどーのこーのとかあるのを見ると、本作は過大評価されているではないかと疑っていた。

一方で、上の事前情報にも書いてある通り、期待もしていた。このためか購入してからも随分寝かせていた。数日前、プライベートで少し嫌なことがあったので、本作をプレイした。

序盤、主人公の夢を何度か見せられた。これがなかなかによくできていて、気分を悪くさせてくれたのだ。後で振り返ると、決してそんなにボリュームがあるとは言えないが、演出とグラフィックと音楽のせいか初見時は異様に長く感じた。二度目、三度目の夢になると苦行を強いられているように感じ、となえとの会話が救いであった。夢を見なくなってから、気分はだいぶよくなった。とはいえ、終わりのない夕焼けとBGMで絶え間なくそのどんよりとした雰囲気が表現されているので、やはりその暗さからは逃れられない。プレイを終えると何とも言えない気分になる。「面白かった」、「微妙だった」、そんな言葉で言い表せない気持ちになった。本作の感想を書く気にもなれないので、数日間ネットで本作の考察とかを調べた。日常生活を送っていると、本作のことが急に気になりだし、ふとした瞬間に「あのBGMまた聞きたいな」と思ったりと、評価はともあれ、印象に強く残っていることは言うまでもないだろう。さらに上述した通り、嫌なことがあったので、ここ数日間あまりいい気分ではなかった。これと相まって、本作の影響が強くなっている。一方では不気味な本作からとっとと目を背けたい気持ちがあるが、もう一方ではその独特な雰囲気に浸っていたい、キャッチーなBGMを聞いていたいという気持ちもある。

余談だが、主人公がたばこを吸っているシーンがたびたび出てくる。エロゲでたばこのことをここまで細かく出してくるのは珍しく感じる。何か意図があるのだろうか。それともただただそういう時代なだけだろうか。

エンディングについては下の考察で述べるので、ここでは割愛する。

 

テキスト

本作のテキストもよく出来ている。といっても、ただただ狂気さを表現できているからではない。ひたすら主人公を奇行に走らせ、脈絡のない言葉を言わせればいいというものではないのだ。詳しくはほかの方の考察を見ていただきたいが、一見狂乱な言動も、実はちゃんと理にかなっている。その辺をきちんとさせているのは、評価に値する。

 

キャラクター

本作のキャラは主人公を含めて全部で8人。主人公、姉、担当医そして5人のヒロイン。ヒロインは一人除けば全員人間ではないので全部で4人ともいえる。また、睦月は二人いるとも考えられるので全部で9人ともいえる。

まずは主人公。基本主人公視点で話が進むが、普通、エロゲの主人公が何を言い、何をどう感じているかのことくらいしかプレイヤーに知らされない。しかし本作では主人公の内面が5人のヒロインになり(下の考察を参照)、つまりゲームの大半は主人公の独り言である。ここまで主人公のことを知らされるのは本作ぐらいだろう。

5人のヒロインの中で一番好きなのは望美。理由を聞かれると困る。というより特に理由はない。誰一人ちゃんとした人間じゃないのでどいつを好きになってもおかしいけどね。

となえさんは唯一ちゃんと会話してくれるせいか、なんだが安心感を覚えた。しかしよくよく考えると、医者としては間違った判断を下したなと。あと、となえの声優がうまい。ずば抜けてうまい。うますぎて一回びっくりした。

 

エロシーンCG

20年前のものなので、絵柄はさすがに古く感じる。最初から最後まで続いた夕焼けはもちろんのこと、垂れ目と時代を感じるようなキャラデザもある意味本作の不気味さを助長させているのかもしれない。とはいえ、グラフィックのクオリティはいい。特に序盤によく出る天使と怪物の一枚絵はよくできている。また、原画集にもあるらしいが、まひるのポスター(魚をくわえてるやつ)が妙に印象に残る。

エロシーンは……おそらく本当のエロシーンはとなえ先生のあの一回のみだろう。ほかはすべて妄想。内容は、妄想なだけに猟奇的でグロテスクなものが多い、実用性は皆無。アダルトゲームとしてはある意味望ましい、ストーリーのためのエロシーンと言えよう。

 

音楽

本作の音楽のクオリティと作品の魅力に占める割合は特筆すべきものだ。本作の音楽は全部で14曲と少ないほうであるが、どれもよかった。

各ヒロインが登場するときの曲、そしてこれが私の一番のお気に入りだが、主人公が個性を発揮(皮肉)する際に流れると思われる「流れとよどみ」。題名がいい。これらBGMは本作の雰囲気とよくマッチしている。全部の曲に言えることだが、それは短絡的な暗さのことではない、むしろ明るさもありキャッチーでもある。しかし聞いていると、テキストやグラフィックと相まって、鬱屈さを感じられずにはいられない。暗い曲を好んで聞くものはあまりいないと思うが、キャッチーなので、プレイ後も思い出し、ついついまた聞きたくなってしまう。

そして、エンディングに流れる本作のタイトルと同名の「さよならを教えて -comment te dire adieu-」は業界屈指の名曲である。歌はMELL。歌詞では客観的な主人公の解釈がされている、これを考察したブログもある。

 

考察

これは本ブログにおいての二つめの考察だ。そもそも考察に値しないエロゲが大半を占めているというのもあるが、自分はゲームをクリアしたらすぐ次のゲームをやるタイプの人間なので、考察に情熱を燃やしたことはない。しかし本作はクリアしてからもしばらく頭に残っていた。

まず、本作はすべてのことを説明しないようにしているが、何かをほのめかすようなセリフはたくさんある。エンディング曲もそうだ。そういう意味では考察しやすいといえるだろう。

また、本作は人気だということもあり、ブログや動画で考察が多くなされている。興味があればそれらを調べればおおよそのことがわかるだろう。自分もそれらを見て感心した。

以上の二点を踏まえて、精巧さを欠いたものだが、私の考察を述べようと思う。他の方の考察を踏まえて、それらに同意した点と、(おそらく)どこにも見られなかった考えをここに述べようと思う。

 

望美について

5人のヒロイン(睦月を実在と妄想の二人に分けると)はそれぞれ実在していなく、本当はカラスや人形だったということは終盤で明かされるが、考察では、それらは主人公の内側にある様々な側面を、それぞれのものを媒体にして少女の姿を形成させてそれらと対話している、と解釈されている。一見脈略のないヒロインたちとの会話も主人公の調子はずれな行動、つまり発狂もこれで説明がつく。この側面というのは、一つ一つほかの方の考察の中で明らかにされている。

その中で、高田望美はその名の通り、主人公の望みであると解釈されている。この考察を裏付けるものはいずれも主人公との会話だが、立ち絵でもそれがわかるのではないだろうか。立ち絵では望美は背筋をビシッとさせており、まっすぐ前、もしくは遠い向こうを眺めているような印象を受ける。しかし給水タンクの上で遠くを眺めているときは何だが悲しそうな面持ちをしている。

また、「望美はたばこを吸っている父親に犯されたんだ」と主人公は突拍子もなく結論付けるが、これは「かつての主人公が自分の望みを語った際に父親から暴行を受けた」と解釈できる。教師以外の夢を語り、教師になれと強要されたのではないだろうか。

 

エンディングについて

これは私のよく言うことだが、いわゆるハッピーエンドやバッドエンドという言い方はあまり好きじゃない。短絡的だからだ。ちなみに、制作側の思う正しいストーリー展開(トゥルーエンド)をハッピーエンド、その他の展開(IFルート)のことをバッドエンドというのは私もよくすることだ。

では今作はどうだろう。一応マルチエンディングのようにはなっているが、教育実習生からインターンになったのがおそらくトゥルーエンドだろう。本作の感想などを見ると、これをいわゆるバッドエンドとみている人がほとんどである。もちろん、最後の最後で何の理由もなく主人公が救われるというのは誰も納得しない展開だし、それのための伏線も全くない。

しかし、教育実習生という彼が囚われている最大の呪縛から抜け出せたと考えることはできないのだろうか。教師も医者も先生と呼ばれるが、教師よりも医者のほうがわだかまりが少ないだろう。もちろん、睦月のような存在が二度と現れないのでインターンとしての生活が延々と続いていくのかもしれないし、終わったと思ったらまた教師に逆戻りをするかもしれない。

また、主人公が病棟に入ってからそれほど長い年月はたっていないと思う。プロローグで主人公が怪物に犯されたが、これはおそらく狂気に呑まれていることだろう、証拠に、序盤で主人公は怪物そのものになっていると自覚する。確固たる証拠はないが、ゲーム開始時ではまだ病棟に入った数日後だと思われる。となえが主人公の病状をあまり細かく分析できていないのもこれで説明できる。

以上を踏まえての私の考えでは、教師から医者へと妄想の内容が変更したことは主人公にとって病状が改善されたことを意味する。これは本作の考察にしてはだいぶポジティブな見方である。最も、これでは本作のテーマがぶれる。とはいえ、これはあくまでこういう見方もできるのではないかという私の考えなので、あしからず。

 

まとめ

本作を評価することはとても難しい。面白かったとも面白くなかったとも感じられなかった。そういう判断基準で本作は制作されてなかっただろう。ただ唯一いえることは、本作の演出、グラフィック、音楽、テキストの出来はとてもよく、独特で魅力的な世界観を作り上げたことだ。

やっとこの感想記事を書き終えた。ここ数日間は随分と本作に苦しめられた。これにさよならできることを思うと、気分が晴れ晴れするよ。